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コラム

ワシントン条約とピアノの関係

貴重な象牙鍵盤の感触を大切に!


絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約
(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)略称CITES(サイテス)。
この条約が、1973年にワシントンで開かれた国際会議で採択されたためにこう呼ばれる。

野生の動物や植物が絶滅の危機に瀕(ひん)しているにもかかわらず野生動物あるいはそれらを加工した製品の売買は世界的に増える傾向にある。
野放図(のほうず)な乱獲や過剰とも思える取引は野生から動物や植物を次々と減らしていく。
「野生動植物が、生態系の重要な構成要素であるだけでなく、自然環境の重要な一部として、人間の豊かな生活に欠かすことのできないものであることに鑑(かんが)み、
絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存を図ることにより良好な自然環境を保全し、
もって現在および将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする」と、野生生物がいかに大切であるかが書かれている。

そして「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存のために総合的な施策を策定し、
および実施するものとする」とも書かれているので、
「ワシントン条約」とこの「種の保存法」とで、だれしもが野生生物の種は、これまで以上に守られると期待した。
〔Yahoo百科事典より引用〕

日本は1995年6月に、象牙業者に在庫量の届け出を義務付け、加工品の流通を規制し。
2002年の第12回締約国会議では、ボツワナ、ナミビア、南アフリカの象牙の在庫を
2004年5月以降、1度だけ輸出することが認められた。
〔知恵蔵2013より引用 杉本裕明 朝日新聞記者〕

この文章はワシントン条約の発足目的と、経緯を述べたものです。
そして ピアノは象牙の恩恵とも大きく関係しております。



〔象牙使用の白鍵:白く縦に模様がありますね。〕

ワシントン条約以前に製造されたピアノのうち
上級機種やコンサートタイプなどの白鍵には本象牙が
数多く使用されてました。
指の汗を象牙が吸い取り、滑らないことで
演奏時のミスタッチが軽減されるというのが利点です。
種類は2通りあり、白鍵が1枚の象牙で作られている物と
1枚の白鍵が黒鍵の前面部で張り合わせて2枚をついでいる物とが
あります。(写真は後者のほうで、ついでいる部分で
白色が変わっているのがお分かりでしょう!)
1975年以降日本では 条約前や解禁時に輸入された在庫の象牙が
コンサートピアノクラスに少量使用されているほどになってしまいました。

※スタインウェイコンサートピアノはワシントン条約発足の年より
即、象牙から樹脂製に切り替えており
その事でピアニストからのクレームも無いようです。
まったく 見事ですね。

他の白鍵の材料としては、象牙と全く同じ質感のある素材で
牛乳のカゼイン蛋白と酸化チタン粉末から作られた
(人工象牙)が発明されたり、オーソドックスな物では
駅の時刻表などと同じ材質の(アクリル)製の白鍵があります。
※戦後の品不足の時代には(セルロイド)なども使用した事もあったようです。
昔の学校の教室にあった ピアノや足踏みオルガンなどは
樹脂鍵盤の初期の頃のもので今より材質が悪く
黄ばんだ白鍵を目にする事がありましたよ。

何種類かの鍵盤をご紹介しましたが、
やはり指ざわりの点では象牙がトップでしょう。

ワシントン条約以降、
私たちも自然環境や野生動植物の重要性を意識するようになりました。
本象牙のピアノに出合ったら、じっくり感触を味わって下さい。
今はとても貴重なものだと!



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