尾崎ピアノ調律所のホームページにようこそ

コラム

ピアノの音色の重要性

心地よい音色を求めて

音の三要素は 音程・音量・音色です。
その中で今日は 音色(ねいろ)についてお話します。

ホーンやヘルツのように器械で数値として測れる
音程・音量と違い
1つの音には 基音があり
それ以外の複雑な倍音構成の交わりによって
音色が決まります。
別名、周波数の成分とも呼びます。

ピアノで言うと 
単純な表現で、硬い音・柔らかい音以外に
打弦した瞬間の打撃音、
巻線などから発する シャーンとかビーンなどの響き、
中・次高音などに要求されるツヤのある響き、
ハンマーやピアノ線の性質によって混じって出る響きも
音色の1つと捉えております。
料理(味覚)で言う うまみ成分の様なものです。

演奏者がピアノの表現の中で、一番神経質になり
アピールしたい部分です。
怒り、喜び、悲しみ、愛など
人間らしさを表現する手段で 
音色(ねいろ)の存在は大変大きいです。

私の持論ですが、ピアノが10台あれば
それぞれが 個性的なものであって良いと考えます。
個々の音響板の木目や ハンマーの製造状態も異なる訳ですから
その楽器の性格もまちまちになるのが当たり前です。

ただ その1台を整音する場合は
ピアノが持つ本来の性格をいかしながら
88鍵 バランスのとれた心地よい音色に
仕上げたいと 私は思います。

ピアノの整音で 著しくマイナスに導くような要求がある時は
整音を お断りする時もありました。

これはあるピアニストから 直接聞いた話ですが、
彼がコンサートホールのリハーサルで ピアノの前に行こうとした時
後ろから調律師が近寄り、言ったそうです。
「今日のプログラムを見て ショパンの曲が多かったので
ショパン風の音色を意識して調律しました。」
その言葉を聞いて、「調律師がなぜピアニストの領域まで
入ってくるのかと」 彼が憤慨したそうです。

ピアノは古典から現代曲と 色々な音楽を演奏する訳です。
当然、オールラウンドでなければいけません。
次のコンサートに支障を来たす音づくりはノーです。

音色の調整はデリケートな作業なので 
ピアノの性格を把握し、経験を積む事も必要です。
特に 弦やハンマーがなじんでない若いピアノに 針刺しをやり過ぎると
その後のピアノレベルにも 大きく影響してしまいます。

ピアノの部屋の残響や 毎日の使用頻度など、
また 最近のピアノはボディに樹脂を使用している部分もあり
組み立て後に弾いてみると、音の抜け方が
変わって聞こえたりもします。
客観的に広い聞き方で捕らえるのも必要です。

音色に関しては まだまだ奥が深く 
今後も 私はこだわり続けると思います。
調律師である以上、ずーと勉強でしょう。

Copyright (C) www.ozakipiano.com All Rights Reserved.