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コラム

調律:ピアノのピッチの変化

ピアノピッチ・最初から今まで

ファッション評論家が、「今年はこの色が ハヤルでしょう!」
こう、テレビなどで言っている所を見ます。

ピアノのピッチも ちゃんと時代の流行があったのです。

※ピッチ(音高) ※

知覚される音の高さ、もしくは音の物理的な高さ(基本周波数 [Hz])を
音楽用語でピッチと言います。
ラ音(A4)を基音としてチューニングする事が常です。
オーケストラのチューニングは 
オーボエが吹くラの音をきっかけに、次第に全楽器に音をコピーしていく
チューニング(音合わせ)この作業です。

さてそのピッチの話ですが
1939年にロンドンの国際会議で 440 Hz とされ、
英語圏ではこれが守られています。

しかし、ヨーロッパ圏ではもっと高いピッチが好まれ、
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団やウィーン・フィルハーモニー管弦楽団は
A=444〜445Hzでチューニングするとも言われます。

日本は1948年A=440Hzに定める前は A=435Hzだったようです。
現在のオーケストラやコンサートピアノは
A=442〜443Hzにチューニングしています。

同じラ音だけでも こんなに差があったのです。

40〜50代の方、
子供のころだれもが聞いた
NHKテレビのPM7:00の時報、
を思い出して下さい。
私も家族団らんの夕食時に、聞いていました。
白黒画面に時計のマークが現れ、ピ・ピ・ピ・ピ------
音程など何も考えてなかったですが、
あの音が(ラ音)440 Hzです。

ではもっと昔は、どうだったのでしょうか?

A=392Hz:ベルサイユピッチ
特にルイ14世からフランス革命にいたる〔フランスの宮廷〕で採用されました。
440Hzよりも1全音低くなります。歴史的にはA=396Hz前後だったと言われます。
これはヴェルサイユに今も残る教会のパイプオルガンのピッチだそうです。
当時リュリ、ラモー、クープランなどの作曲家がいました。

A=415Hz:バロックピッチ
バッハ以前のいわゆるバロック音楽の演奏に一般的に使われます。
A=440Hzから平均律で半音低いA♭の音です。
当時JSバッハ、ヘンデル、スカルラッティなどの作曲家がいました。

※私は以前、A=442Hzで調律しているチェンバロを
バロックピッチで調律をした事がありました。
このピッチで古典音楽を再現すると
A=442Hzには無いバロックの臨場感を味わう事が出来ます。

A=430Hz:クラシカルピッチ
ウィーンピッチや、モーツァルトピッチとも言います。
古典派〜ロマン派の時代。ウィーンで日常使われたピッチです。
これは、A=440Hzでは、A音とA♭音との中間になります。
モーツァルト、ショパン、リストはこのピッチで演奏した事になります。


どんどんピッチが上昇して来たのが分かるでしょう。
今のコンサートは 一緒くたに442Hzで調律し演奏していますが、
ピッチの変遷を考えながら音楽を味わってみるのも
良いでしょう。
バッハやヘンデルが今、生きていて
442Hzで奏でる彼らの作品を聞いたとしたら
「こんな曲を作曲した覚えはない」と言うでしょうね。

ある意味、ピッチも流行があった訳です。
楽器(ピアノetc)も製作技術の進歩とともに
高い音律にも耐えられるようになり
ピアノピッチも徐々に変化してきたのです。

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